今年で創業78年の歴史を持つ老舗バイクショップ、ピットイン樋口が、インディアンモーターサイクルの専売拠点となるインディアンモーターサイクル埼玉を、埼玉県さいたま市大宮区東町にオープンさせた。
インディアンモーターサイクルは、アメリカで最も古いバイクブランドである。1897年に、ヘンディーマニュファクチャリングカンパニーという自転車製造会社が設立され、その後、半世紀にわたるオートバイの生産を通して、アメリカの ライディングカルチャーを牽引。1923年に現在のインディアンモーターサイクルカンパニーに社名が変更された。
「バイクを男臭い乗り物ではなく、お洒落な乗り物という風に見せたい」
そして、今回オープンしたインディアンモーターサイクル埼玉は、北関東で唯一のインディアン正規販売店となる。ストアマネージャーを務める牧野剛昌氏は、新店舗のイメージについて「まず、THEバイク屋さんという印象の店舗にはしたくありませんでした。バイクを、男臭い乗り物ではなく、お洒落な乗り物という風に見せたいと考え、店舗の3面をガラス張りにしています」とコメント。
道路を挟んだ対面にオープンさせたピットインアメリカンモーターサイクルでは、これまでピットイン樋口として扱ってきたハーレーダビッドソンの中古車販売やメンテナンス・カスタムなどを請け負うと同時に、インディアンモーターサイクルの整備工場機能も持たせている。そのため、新店舗はショールームとして、最新のインディアンモーターサイクルはもちろんのこと、コーディネート用のアパレルやヘルメットを展開し、開放感のあるお洒落な空間となっている。
新店舗で取り扱うバイクブランドをインディアンモーターサイクルに決めた理由については、「タイミングもありますが、単純にインディアンの車両に魅力を感じたことです。最近発売されたモデルでいうと、FTR1200やチャレンジャーなどは、アメリカのバイクなんですが、良い意味でアメリカらしくない部分を持ち合わせているんです。アメリカンというとハーレーのようなクラシカルなイメージのモデルが多く、これまでのインディアンも同じだったのですが、最近はクラシカルな部分を残しつつも、ハイテクになっています。パワーであったり、採用している部品、電子制御など、アメリカンな雰囲気を残しつつも、最新のテクノロジーを搭載することに迷いがない。カルチャーを大事にするアメリカンとハイテクで乗りやすい先進性を大事にするヨーロッパのバイクのいいとこ取りをしたような、新しい魅力があるんです」(牧野氏)
アメリカンカルチャーを楽しんでもらえるようなショップになっていきたい
同じアメリカンでも、ハーレーは乗る人がカスタムをしていくことで、自分が乗りやすいように完成させていくバイク、インディアンは最初から完成度が高く、買ってすぐ面白さを感じられ、さらにカスタムすることも楽しめるバイクというそれぞれの魅力があるそう。そして、ピットイン樋口としてこの2つの店舗を対面でオープンすることで、ディーラーの取り扱うバイクブランドが変わったからという押し付けではなく、ユーザーそれぞれの価値観で選んだアメリカンカルチャーを楽しんでもらうショップを目指していくという。
「今までハーレーのディーラーをやっていたお店なのに、いきなりインディアンだけのディーラーになると、これまでのお客さんに対して押し売りみたいになっちゃうんです。バイクディーラーとして扱うメーカーが変わると、お客さんもそのメーカーに変えさせるというショップもありますが、そうはしたくありませんでした。もちろんお店としては、新車を売っていくことも大事ですけどね」(牧野氏)
これまでハーレーのディーラーとして慕ってくれたお客さんも大事にすると同時に、お店としての新しい挑戦をすることで、新たなアメリカンカルチャーを広めていく。これが今回、インディアンモーターサイクル埼玉をオープンさせた最大の理由だそう。
目指すのはアメリカンカルチャーの継承
「一番自分の好きな服装で、一番好きなバイクに乗ってもらえれば、多分、誰から見てもカッコいい乗り物になると思うんです。ハーレーがそうだし、インディアンもそうなっていくと思います。実はバイクってエコな乗り物で、事故を起こしたからって、お客さんには思い入れがあるのでフレームからキチンと直す。だから、廃車にすることが少なくて、戦争が終わった次の年に作られたバイクなんかも、現役で動いている。それを今、キチンと乗っている人が次の人に渡す。それが、文化の継承だったりするんですよね。ただ単に中古車を買うってだけなんだけど、今の乗り手がきちんと整備してあげてないと、次の人が嫌になっちゃったりするわけで、そういう文化の継承をみんなでやっていこうと、お客さんや同業者を含めて動いています」
そして、目指すところはアメリカンカルチャーの継承。インディアンだからとか、ハーレーだからではなく、一番カッコいいと感じるものを一番カッコいいと思う姿で乗ってもらうこと。それこそが、バイク屋さんらしくない、コーヒーショップのようなお洒落な店舗をデザインした理由にも繋がっていくとのこと。目指すところは、バイク乗り同士が見てカッコいいアメリカン乗りではなく、誰が見てもカッコいいアメリカン乗りの姿なのだ。
「それらを実現するには、お店としてお客さんにどれだけ信頼してもらえるかが大事だと思うんです。技術の面でも、人柄としても、バイクの購入を決めた時のセールスの人が、次の車検の時にはお店からいなくなっているとか、そういうお店にはしたくない。だから、うちは各スタッフがメカニックやセールスなど様々な業務を兼務しています。メンテナンスやカスタムのことから新車購入の相談までなんでも話せるスタッフが揃うお客さんに信頼されるお店にしていきたいと思います」(牧野氏)